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シベリア学実習<イルクーツク・ウラジオストク> :工学院 小笠原渉 (2019年度基礎科目参加体験談)


OGASAWARA Sho

Hokkaido University, Graduate School of Engineering, Master Course 1

Period of time: 1 July, 2019 ~ 9 July, 2019

Host University :Irkutsk State University / Far Eastern Federal University

成田からおよそ5時間半。シベリア航空の独特な機内食とシュールな安全説明を十分に楽しんだところで、ようやく極東の地イルクーツクに到着した。ここイルクーツクは、世界最深の湖・バイカル湖を抱える都市で、夏は30℃、冬は-30℃になる色々極端な場所である。訪問した際は夏至に近かったため日が長く、夜11時ごろアンゴラ川沿いを散歩していても西の空がわずかに白んで見えるぐらいであった。

街を歩いていると、彫刻の施された豪奢な建物のすぐ向かいに、コンクリート打ちっぱなしのような極めて質素な建物を見ることがままあった。左右で建築物が対極的になっているのでちぐはぐな印象を受けるが、これには歴史が関係しており、前者の方はスターリン様式などと呼ばれ、後者の方はソビエト様式といったものらしい。スターリンのコストを無視した豪華絢爛な建築物に対し、ソビエトでは合理的で低コストなものが広まった…街並み一つとっても知ると知らないとでは見方が変わってくるのだから面白い。

シベリア実習開始から4日目、先述のバイカル湖へと向かった。最大水深1,642mで世界一という事が有名なのだが、それよりもその透明度と固有種の関係について注目したい。バイカル湖見学前の講義で聞いたところによると、このバイカル湖には固有のsponge(海綿のようなもの)が生息しており、正しくスポンジ状の多孔質構造の中に藻類を共生させることで水の浄化作用をもつのだとか。環境工学、それも水に関することを学んでいる身としては興奮ものだ。講義の際に質問攻めにしてしまった学生には少し申し訳ないことをしたなと思っている。それはさておき、摩周湖を抜いて世界一の透明度を誇るバイカル湖。その裏に特殊な生態系の働きがあるというのは非常に興味深かった。

アンゴラ川沿いの夜景。時刻は23時ごろであったと思うが、端の方が白み、空がグラデーションになっているのがわかる。日中は暑いが朝と夜は涼しいので散歩するのが気持ち良かった。

バイカル湖の水。これだけでもとても澄んでいて綺麗であることがわかる。昔は飲み水にも出来たのだとか。現在は製紙工場なども近くにあるため、そのまま飲むことは勧められない。因みに、水温が低いので泳ぐことも勧められない。

ウラジオストクへ向かう飛行機の中、拍手喝采で目が覚めた。ロシアでは飛行機の着陸が上手くいくと拍手が起こるらしい。実際、着陸の衝撃ではなくその後の拍手で目が覚めたのだから、綺麗な着陸だったのだろう。シベリア学実習5日目、海沿いの都市・ウラジオストクへやって来た。海が近いためか、朝方は濃い霧が出る。それもあって少々冷え込むが、霧に煙る街並みは不思議な雰囲気があってワクワクする。

極東連邦大学内にあるホテルに泊まったのだが、そもそも大学内にホテルとはどういうことだ。海沿いに人工の滝があるかと思えば、大学のメインビルはショッピングモールを思わせるようなガラス張りの高層ビルだ。ルースキー島にあるこの大学が異様なまでに整備されているのは、2012年に行われたロシアAPECが関係している。というのも、APECの会場をそのまま大学施設として利用しているのだ。それまで島と本土を移動する手段はフェリーしかなかったが、APECに合わせて橋も掛けられて交通の便も幾分良くなったようだ。良く見ると橋のワイヤーがロシアの国旗の色に塗られているのも芸が細かい。

シベリア鉄道東の始まりであるウラジオストクは、その地理的要因もあって日本やアジアとの関係が密のようである。街を歩いていても、イルクーツクの時より日本車を多く見かけた。加えて件の橋の下には柔道伝承の地があった。ロシア人の男性が帯を受け渡されているところが銅像になっており、これがゆくゆくは派生してロシア柔道・サンボ発祥の地ともなるわけだ。サンボは柔道に動物の動きを混ぜることで生まれたという話を聞いたが、なるほど、中国の象形拳とも相通じるものを感じた。

最終日はグルジア(ジョージア)料理をいただいたが、どの料理も香草を使用したユニークな香りがしてついつい食べ過ぎてしまった。中でも気に入ったのはチャチャと呼ばれるウォッカである。グルジアは葡萄が有名で美味しいワインがあることでも知られているが、このチャチャというウォッカは葡萄を使用している。そのためか、ブランデーやラムを思わせる甘く果実感のある香りが特徴で、しかし飲むとウォッカらしくスッと染み込んで来る感じがする。ウォッカ好きとしては新しい出会いに感動した。最後はこの9日間で出会った人、文化、自然、歴史、全てに感謝を込めて「スパシーバ」で乾杯をした。

極東連邦大学のメインビル。小さなカフェや銀行もある。前面がガラス張りになっており、景色も抜群。この上階には図書館もあり、開放的な空間で作業を行うことが出来る。財を感じた。

博物館で見つけた昔のウラジオストク駅。良く見ると「浦汐駅」と書いてある。ウラジオストクでは本当に日本を感じさせるものが多かったが、これもそのうちの一つ。
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