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北極域永久凍土生態系実習<ロシア・ヤクーツク> :環境科学院 山﨑玲寿 (平成29年度基礎科目参加体験談)


氏名 山﨑玲寿
所属大学院 環境科学院 専攻 球圏科学専攻
課程 修士 学年 2年

 

参加フィールドワーク 北極域永久凍土生態系実習<ロシア・ヤクーツク>
平成29年8月6日~ 8月18日

 

  • 派遣プログラム内容

2017年8月6日から三週間にわたり、ロシアのヤクーツクに滞在した。ヤクーツクは、世界有数の大きさを誇るレナ川のほとりに位置する人口約30万の都市である。中心部はショッピングモールやビルを立ち並ぶ一方、郊外はレナ川の氾濫でできた広大な草原が広がる。ヤクーツク市内全体が永久凍土の上に位置しており、人々の生活がその影響を大きく受けていることが印象的であった。滞在先は本プログラムの共同実施先である北東連邦大学(NEFU)の学生寮であり、周りにスーパーやカフェが多数あり大変過ごしやすかった。

本プログラムは二部構成であり、前半は森林における生化学的な調査実習、後半は永久凍土の観察を行った。前半はヤクーツク郊外にある演習林に一週間滞在し、土壌ごとの光合成速度の測定などを行った。後半はレナ川の対岸に渡り、永久凍土の影響を反映している湧水の観察や、永久凍土融解による地形変化の観察を行った(写真1)。前後半の実習ともにNEFUの学生と共に議論及び発表を行った。

 

  • 本プログラムより学んだこと

ヤクーツク全域において、地表から約2m下には永久凍土が存在しており、地形や植生がその影響を大きく受けている。昔は永久凍土内に穴を掘ることで天然の冷蔵庫として利用し、現在は永久凍土に杭を打ち込むことで建物の土台として利用している。演習林での実習では、植生が異なる場所において永久凍土まで穴を掘り、地表から永久凍土までの土壌水分や温度の鉛直変化を観察した(写真2)。地表の温度は20度にも関わらず永久凍土直上では約0度であり、肌でその冷たさを体感することができた。近年の地球温暖化に伴う気温上昇等の影響により永久凍土の融解が進んでおり、この融解が続けば広範囲おいて植生や地形が変化し、最終的には生態系に大きな影響を与えることが危惧されている。

実習後半での地形変化の観察では、永久凍土の融解により林が湖へと変化し、最終的には湖が蒸発し、草原となる過程を観察した。この変化は数十年から数千年のタイムスケールで進んでおり、一旦地形の変化が始まるとその影響は長期間に渡ることを示唆していた。ヤクーツク市内では、永久凍土の融解による建物の傾斜や道路の凹凸が深刻な問題となっており、地中に永久凍土の融解を緩和するパイプを打ち込む等の対策が行われている。日本では気候変動の影響を身近に感じることは少ないが、ヤクーツクのような北極圏では現実問題としてその影響が表れつつあることを理解できた。

 

  • 参加しての感想

本プログラムは永久凍土の専門的な知識を深めた以上にロシアという国を知る上で非常に良い機会であった。ロシアに実際に滞在し、ロシアの学生とともに実習を行ったことでロシアの人々や文化に対する理解が大きく進んだ。印象的だったのは、ロシアの学生が日本文化や日本語に予想以上に興味を持ち、その話題でよく盛り上がったことである。本プログラムで得た専門的な知識は今後の修士論文に生かすことは勿論のこと、このプログラムを通して得たロシアとのつながりを大切にしていきたい。

写真1: 永久凍土融解により生じた湖が干上がって形成された草原。右手前の白い場所は、湖水が蒸発した際に析出した塩。

写真2: 永久凍土まで掘った穴の土壌サンプリング。地表から約1.8mに永久凍土が存在した。
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